水場のルリビタキ

鳥は乙訓の４月を　少しだけ過ごし

ルリビタキ

鳥は小さな谷の４月を　少しだけ過ごし

水場のルリビタキ

「明日晴れるといいですね」

わたしはいちども
生まれ育ったこの町に
さよならを告げたことはない
だからわたしは
この町の移り気な空も
ふるさととして見たこともない

でも明日の朝
さよならとひとり歩きを
してみるつもり　そしていつか
町に過ぎゆく
時のすべてがふるさとの
あなたのところに帰ってくると思う

　こころ一杯笑っているでしょうか
　ひとりを求めて　うつむいているでしょうか
　思い過ごしと気づいて帰るのでしょうか

　けれど今日までと
　明日からの道とふるさとは
　きっとどこかでひとつに結ばれているだろうから

明日晴れると　明日晴れるといいですね

ルリビタキ

鳥は一人二役で　だるまさんを転がす
私は下駄箱で　上履きを探す
百足をくわえ　枝で居留守ばかり
たどりつく　応答メッセージのあなたの声

ヌルデの実を収穫しつくし
季節は平均台を匍匐前進
涸れ谷は水量を増し　小さな水場は消滅
私は　お菓子の家で待ちぼうけ

遺失物公告期間はもう過ぎた
日々を過ごしているのに
それは　今もあの場所で私を待ち続ける　錯覚を感じながら

忘れ物市に偶然立ち寄れば
不意なすれ違いを期待したり
季節がめぐれば　手を枝に伸ばし　蕾を観察したり

水場のルリビタキ

長靴を並べ　ランプを吊るし
小さな谷で　お菓子の家へ着くまでのことことを
こぼれる明かりだけを残し　私らは語り合った　あなたの
袖にさわるしぐさに　寒さを思い出した

蛾が幾度かランプを揺らし　音をたてて
明かりを小さくした
夜の世界は　月の姿はなかった
月明かりはしかし　谷底に水場をてらしていた------

鳥が寝ぐらで地鳴きした
薪が気まぐれに　煙の向きを変える
あなたは目にしみて　視線を送る

やがて鳥は　小さな谷をふたたび去るだろう
私は襟元を触れれば　あなたは目をつぶれば
灰のような蛾のような

水場のルリビタキ

鳥は水を欲し

ルリビタキ

３月はいつまで

ルリビタキ

３月はいつまで

ルリビタキ

鳥は笹につかまり

ルリビタキ

向日市にも青い鳥は飛んでいました