水場のメジロ

「別れの詩」
人は人と出会ったときも
人と別れを告げたときも
心はまた会う日のことを思います

だから笑顔でふたたび
君と

水場のメジロ

「明日晴れるといいですね」

わたしはいちども
生まれ育ったこの町に
さよならを告げたことはない
だからわたしは
この町の移り気な空も
ふるさととして見たこともない

でも明日の朝
さよならとひとり歩きを
してみるつもり　そしていつか
町に過ぎゆく
時のすべてがふるさとの
あなたのところに帰ってくると思う

　こころ一杯笑っているでしょうか
　ひとりを求めて　うつむいているでしょうか
　思い過ごしと気づいて帰るのでしょうか

　けれど今日までと
　明日からの道とふるさとは
　きっとどこかでひとつに結ばれているだろうから

明日晴れると　明日晴れるといいですね

ヤマガラ

３月もあと少し

水場のソウシチョウ

また一日のおわりに

水場のメジロ

鳥は低い枝で　水場の順番を待つ
私らは無言で待っていた
あなたは無意識に震える声で口ずさめば
草も花もあわてて優しき歌を縁どった

あなたは　うつむいている
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
空が曇るのは　何のせい？
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

あなたはうつむいたまま　恥ずかしいからと
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
鳥は囁きつつ　順番を待つ

私は　風のせいと　言う
あなたは　空が青いのも風のせい？
鳥は緑の草むらに潜草する

ルリビタキ

長靴を並べ　ランプを吊るし
小さな谷で　お菓子の家へ着くまでのことことを
こぼれる明かりだけを残し　私らは語り合った　あなたの
袖にさわるしぐさに　寒さを思い出した

蛾が幾度かランプを揺らし　音をたてたあと
明かりを小さくした
夜の世界は　月の姿はなかった
月明かりはしかし　谷底に水場をてらしていた------

（小さな谷に到着した）
薪をくべ　灰が帽子に降る
あなたは目にしみて　視覚探索をつぶやく

鳥が寝ぐらで地鳴きした
私は襟元を触れれば　あなたは目をつぶれば
灰のような　蛾のような

水場のメジロ

鳥は季節を生きのびて　全身で水を浴び

水場のカケス

鳥は小さな谷で　翼を広げ

水場のイタチ

動物はどこからきてどこへ行く

ヤマガラ

小さな谷に流れが戻り　鳥が戻り