通りがかりで能勢妙見さん

ここは朝食で　赤い実の熟す木です
鳥たちはまだ　どこか寝床の木です
私は早く　着きすぎました

ここは二度寝で　欠伸と毛布の木です
鳥たちはまだ　どこか朝食の木です
私は早く　着きすぎました

ここは雨やどりで　傘と合羽を迷う木です
鳥たちはまだ　どこか欠伸の木です
私は早く　着きすぎました

この木を背景に　あなたの遺影を写した
あなたは確か　ぎこちない笑顔をみせた
私らは確か　あなたの笑顔を覗き込んだ

陽当たりの良い位置に　在宅ベッドを置いた
水屋の引き出しに　あの一枚をしまったまま
だからあきらめて笑って　取り出さず

ここはポストで　書き出しと投函に迷う木です　
今日　木の根元で便箋が散らばっていたから
一枚一枚拾う　どれも一行も記されず

ここはきっと寝床で　昼夜で樹形は変わるでしょう
鳥たちはまだ　どこか３時のおやつの木です
私は早く　着きすぎました